コミュニケーションロボット

先日、ある温泉に行った時のこと。休憩室である会話が聞こえてきました。一方は確かに人間の声なのですが、もう片方はどうも子供の声ではあるがなにか機械音です。そっとそちらの方向を見ると、高齢のご夫婦と思しきお二人のうち、女性の方が何やら片手に人形のようなものを持って話しかけており、それに人形が答えていました。人形と見えたのは高さ(この場合“身長”というべきでしょうか?!)50センチほどでしたが、かわいらしい声で応答しています。女性が、「ここからの眺めはいいですよ!」というと人形は「それはよかったですね!」などと応答しています。私からすれば実に奇妙な風景にしか見えませんでしたが、気になり、いろいろ調べてみると、このような人形はコミュニケーションロボットというらしく、トヨタソニー、NTTなどの大手企業をはじめ、タカラトミーや或いは博報堂などからも製品が出ているとのことでした。また価格も高いものは30万円代から安いものは4000円代まで、かなりな幅で売られています。今はやりの人工知能(AI)という技術などを搭載しているようですが、子供の教材用から高齢者の介護用まで、その用途もこれまた多種多様です。私が目撃したロボットは、高齢者に人気が高い「Palmi」(パルミー)というものだったようで、「ご年配の方がペットの感覚で買われていくことが多いですね。とくにメカ好きな男性に人気があると感じます。ご両親へのプレゼント用に購入される方も少なくないですね」という家電小売りの担当者の感想が述べられています。この「Palmi」(パルミー)は、購入時は人間の赤ちゃん同然状態ですが、持ち主たちとの交流を通して徐々に言葉や掛け合いなどを学んでいくのが特徴で環境によって個性が自然に生まれる、という代物だそうです。確かに人間不信の時代には、人間よりも機械の方が信じられる、ということかもしれませんし、それほど目くじらを立てる必要もなく、子供の人形が少し賢くなったもの、というくらいの認識でも良いのかもしれません。しかし、それでもその先に来るものを考えると、やはり「ちょっと待てよ!」と言いたくなります。私は別のところでよく引き合いに出すのですが、大阪大学石黒浩さんという教授の方がいらっしゃいますが、彼は自分自身のアンドロイドを作ったり、最近では夏目漱石のアンドロイドを作成し、先日は二松学舎大学で「アンドロイド(ロボット)にも人格権がある」という論などを展開しています。確かに、AIの技術は目を見張るものがあり、例えば24時間フル稼働の為替、株式取引の世界ではほとんどAI任せになっているという話や、或いは軍事技術においてもAIの導入はすさまじいものがあるようです。その石黒さんは、「最後は人間も無機物になる。それは進化ということだ」と「えっ」と耳を疑う言葉を述べています。AIの無定形な乱用に対しては、亡くなった英国の物理学者のスティーブン・ホーキング博士や最近ではマイクロソフトビル・ゲイツ氏も警鐘を鳴らしていますが、果たして私たちは、石黒氏の言うように「無機物」目指して“たゆまぬ努力”を行っているのでしょうか!「所詮機械さ!」という見方もありますが、私にはどうも嫌なものを感じざるを得ません。皆さんはどう思われるでしょうか?ちなみに、炭焼きは有機物を無機物に変える工程ですが、私たちの日常生活も炭焼きの工程をたどっているのでしょうかね。

<DIGOエコロジー村通信2018年10月号より>

 

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