スマートシティと人権と政治

参議院選挙が終わりました。いつもの国政選挙より、候補者の街宣車からの音声が非常に少ないと感じました。巷で言われる「マスコミの(選挙報道)無視」の影響もあるのかもしれませんが、もっと大きな要因は、「ネット選挙」がいよいよ顕在化してきたのではないか、ということです。候補者がそれぞれ街宣車に乗り、選挙民一人ひとりに呼びかけるという従来の方法もよりも、SNSによる情報拡散効果の方が大きいと、ほとんどの候補者(或いは政党)は判断したようです。政治的イデオロギーに関係なく「選挙」が「ネット化」したことを証明したのが、「れいわ新選組」だったのではないでしょうか。大手マスコミによるほぼ完全に近い無視の対象となりながら、最終得票率で5%近くを確保したことはそのことを物語っているようです。また「れいわ新選組」がおこなったクラウドファンディングで4億円(現時点)の資金が集まったことも同じ要因でしょう。ところで、台湾の台北市長の柯文哲氏は4年前の台北市長選に無所属として出馬し、台湾の二大政党である民進党と国民党の候補者を破って初当選しました。政党のバックアップを持たない柯文哲氏の当選の原動力となったのが、若い世代を中心としたネットによる選挙活動だったと言われています。その柯文哲氏が積極的に推進しているのが、「スマートシティ」政策です。2018年1月に台北市がドイツの仮想通貨IOTA(アイオタ)基金会と提携し、IOTAの技術をベースとする「智慧城市(スマートシティ)」化を目指していることが報道されました。一方、カナダでは米グーグル姉妹企業のサイドウォーク・ラブズがカナダ・トロントで手がける「スマート・シティー」構想に対して、カナダ自由人権協会が「カナダはグーグルの実験用マウスではない」としてカナダ政府を相手に訴訟を起こしています。カナダの通信機器大手ブラックベリーの元共同最高経営責任者(CEO)であるジム・バルシリー氏は、この事業は「監視資本主義における植民地化実験であり、都市や市民や政治の重要な問題を強引に排除しようとしている」「過去30年間にカナダが立ち上げた見当違いの革新戦略のうち、このスマート・シティーと言われる事業は最もばかげているだけでなく、最も危険をはらんでいる」(BBCジャパン)と述べています。「スマートシティ」政策が積極的に推進されている国は、先進国よりも途上国のほうが多いように見受けられますが、「人権意識」の濃淡が関係しているのでしょうか。「スマートシティ」と「ネット選挙(政治)」の間に、情報技術的なものは別として、直接的な関連は今のところ見受けられませんが、遅かれ早かれその関係性は顕在化してくるものと思われます。果たして、「れいわ現象」とも言われる日本の今回の「ネット選挙」が地方よりも都市部を集中的に対象としたことは日本における「スマートシティ」推進にどのような影響を与えるのか興味があるところです。ところで、どちらかと言えば田舎に住んでいる私にとって今回の選挙の街宣車による音声の少なさは、歓迎するものではありましたが、一方で「無視される田舎(地方)」という感もないわけではありません。「都市型民主主義」という表現が妥当かどうかわかりませんが、「都市化」と「政治(人権)」と「スマートシティ」というキーワードが万民に対して平等にその効果を配分する力になるのかどうか、問われるのではないでしょうか。