童話と炭焼

世界恐慌は止まりの無い状況の中で、日本の政治は混迷と軽佻浮薄な雰囲気が漂っています。

「誰かが答えを出してくれるだろう」という幻想は捨てた方が良いのかも知れませんね。

個々人が一人ひとり、「生きる意味」を問われる時代に入ったのでしょうか・・・。

 

童話と炭焼

 

炭焼は童話の中でも語られています。

竹久夢二の「玩具の汽缶車」では、寒い冬を迎えようとしている町の女の子、花子が山の北山薪炭に「おばあさんのために早く来てください」という手紙を出し、手紙をもらった北山薪炭は、玩具の汽缶車で山から町へ下りていく、という物語です。しごく、単純ですが、とても気持ちが良くなる物語ですね。

夢野久作には、「虫のいのち」という少し不思議な童話があります。

中国、朝鮮半島、そして日本に昔から伝わる炭焼長者譚(すみやきちょうじゃたん)が話のベースとなっています。

主人公の炭焼勘太郎が焼く炭材の中に虫がいて、「小さい小さい虫一つたれがあわれと思おうか」という歌が聞こえる夢を見、「焼くと虫も死ぬのではないか」という思いにとらわれ、結局炭を焼かずに、山を仙人のようになるまでさまよい、そこに天女が現れ・・・・・

という物語ですが、少し悲しくしかし心の奥にある人間の優しさ、というものを感じさせてくれます。

 

興味ある方、下記のサイトにこの二つの物語があります。

二つとも、とても短い物語ですので、お読みください。

 

(玩具の汽缶車)

(虫の生命)

 

このほか、宮沢賢治の「ひかりの素足」にも炭焼は登場します。岩手県は、全国一の炭焼が地場産業の地域ですから、賢治の物語に炭焼が登場するのは当たり前かもしれませんが・・・。

 

ひかりの素足

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

混迷の時代だからこそ人間の本質が問われるのでしょうが、それは結構難しいことではなく、もっと単純なものかもしれませんね。

書店に平積みされている経済書ではなく、童話がそれを教えてくれそうな気がします。(2009.3)