創造と破壊をくり返す歴史

 アメリカ大統領選挙結果については我が国のマスコミ、SNSなどあらゆる領域、階層から様々な評論が飛び交っています。ヒラリー(当選)を想定内として期待していた向きには相当なショックの様です。それは現政権支持派だけでなく反支持派においても共通な認識も見受けられます。それぞれの候補者の言辞や人格、それらに連なる様々な組織、ネットワークなどの思惑が絡んでいると思います。トランプのタカ派的、差別主義的性格を以て批判の対象とする「システム変更派」もいますが、大概に言えば、現秩序(システム)を維持するのか、そうでないのか、ということです。トランプ自身が「世界を変える」と言った訳ではなく逆に「国内優先」策を遂行しそうですが、今回のトランプ大統領誕生については、もっと大きな歴史のうねり現象として見ていくことの方が的確のように思います。
 歴史は線形的に進展するのではなく、カオスや複雑性を含む非線形的な流れであり、現実における個的な変化が歴史上の大きな変化を生んだ事例は数多くあるでしょう。もう一つの歴史進展の特性は「創造と破壊」という現象面があります。我々の日常世界も常に「創造と破壊」の繰り返しですが、歴史上においても「創造の時代」と「破壊の時代」というものがあるようです。しかし、創造と破壊は個別に断続して起こる訳ではなく、いわば創造的破壊と破壊的創造というインターフェイスを伴うと言えますが、この観点から今回の「トランプ大統領誕生」を「創造」とみるか「破壊」とみるか、また彼の実行する施策が「創造的破壊」策なのか、「破壊的創造」策なのか、どちらにしても、歴史が大きく動く要因としての今回のアメリカ大統領選挙は位置づけられるのではないでしょうか。 

 一言付け加えれば、歴史をこのように客観的に俯瞰することは文字通り頭の中の「想像力」であり、実体として存在する例えば私たち自身は、歴史上の主体的存在でこそあれ、他人事のような客体にはなれません。自分自身の身の回りの小さな変化、それは破壊かも知れないし創造かも知れない、そのような変化に対する自らの意志こそが重要なファクターとなるでしょう。表層的に「システム維持勢力」に回るにせよ「システム変更勢力」に回るにせよ、歴史を作る主体としての意志を自ら認識し、そして行動することこそが、「歴史の創造」へつながるということです。破壊から創造が生まれる時は、古いものと新しいものが激しくせめぎ合い、大きな苦痛も伴うものです。特に古いものが死に至る最後の断末魔の状況は想像を絶するものがあるでしょう。アメリカ国民も日本国民もそしてヨーロッパ、ロシア、中国、そして世界中がこのカオス状況、「創造と破壊」の時代へ突入したことを深く認識すべき時が来たように思います。