女猟師”狩りガール”

八王子恩方地域も通年のように「害獣駆除」が行われています。土日になれば猟銃を持ったハンターがアチコチに出没、時にはエコロジー村敷地内や三太郎小屋敷地内でもイノシシを追っています。農作物に被害をもたらすことで、農水省の発表によれば2015年度で農作物被害金額は、合計で191億円。主要な獣種別の被害金額はシカが最多の65億円。次いでイノシシが55億円、サルが13億円となっているそうです。しかし、これらの野生動物に対処するための管理捕獲をする猟師は高齢化が進み、環境省の発表によれば、平成25年度において狩猟免許保持者は全国で185000人、うち60歳以上が123000人とおよそ66%を高齢者が占めています。そこで大日本猟友会は女性をターゲットに特に若い女性を対象とした「目指せ!狩りガール」というWEBマガジンを開設したところ、高い反響を得ました。2015年の10月に開催された「第3回狩猟サミット」の参加者は、32都道府県から総勢177名が参加、このうち女性の参加者が46名(25.9%)を占めたそうです。ちなみに女性の猟銃免許保持者は平成25年度で2037人います。

 このサミットの模様を取材した日経ビジネス誌はこの女性猟師ブームについて、「狩猟女子の本やブログを見ると、東日本大震災がきっかけとなったという人もいます。見ると普通のかわいい女の子たちですが、自ら捕らえたイノシシやシカの皮をはぎ、飼っている鳥を絞め、解体し、料理して食べ、皮をなめす。体験をもとに狩猟や解体のワークショップを開催する人もいます」(日経ビジネス2015年10月号)と報告しています。

 これらの女性に猟師を目指す動機を尋ねたところ、「農作物への鳥獣被害を減らしたい」(福井県高浜町町議会議員の児玉千明さん(25))「シカ肉が好きなので、自分で獲って食べてみたい」(女優杏さん(31歳))「地域貢献の一つ」(北海道初山別村村役場勤務の吉田百花さん(23歳))「狩猟は命をいただく仕事。その意義や魅力を伝えたい」(奈良女子大大学院1年の竹村優希さん(23))と動機は様々です。目的(動機)とともに、狩猟そのものの魅力については、「自然の中を皆で駆け回って、獲物を分かち合う瞬間に幸せを感じる」(山梨県猟友会青年部の勝俣麻里加さん(25))「仕留めた瞬間が爽快」(北海道白糠町松野千紘さん(25))「撃ち損ねたシカと目が合うと、悔しさと闘志がわき起こる」(大阪府門真市の国見綾子さん(28))「たくさんのヒトの理解と動物の命をいただくことで成り立っている文化」(網・わなの狩猟免許をもつ長濱世奈さん(27))「ただの殺生と違うからこそ精神性がとても大事」(兵庫県朝来市の吉井あゆみさん)「命を頂くことで私たちは自分の命をつないでいる」(川崎市木こり系女猟師、原薫さん)「殺生を誰かがやってくれているおかげで肉を食べることができるんだと実感」(東大阪市の会社員、藤崎由美子さん(46))、、、、とさまざまな感想を述べています。

 これらの狩りガールに共通する通過点として「何故生き物を殺すのか?」という質問を必ず受けるそうです。先述の木こり系女猟の原薫さんは、初めて獲物を仕留めたときのことを「目が合いましたね。しばらく見つめ合っていましたよ。仕留めたときはうれしさ半分。あとは、ああ殺しちゃったなあって」と述べ、「今でははっきりと言えます。命に差はないと。食肉用で飼育される豚や牛と、山の中を歩き回る猪や鹿。どちらも同じ命なんです。その命を頂くことで私たちは自分の命をつないでいる」と信念を持って言えるそうです。

 先日、埼玉県越谷市の皮革工場を見学する機会に恵まれ、およそ4時間ほど皮のなめし工程から原皮製品になるまでを視察しましたが、ご案内を頂いた㈱ジュテルレザーの沼田聰会長からも「命を頂いている」「皮革製品になっても(皮は)呼吸している」というお話を頂きました。人間と動物の関係は古代から続いていますが、人間と動物の間の命のやり取りを一方的でなく双方が「命を繋ぐ」という感覚・感情を忘れてはならないでしょう。それにつけても人間同士の間こそ命の扱いの粗末さが目立ってきていることを改めて思う次第です。 

<DAIGOエコロジー村通信4月号より>