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「電力自由化」の裏読み

この4月からこれまでの大規模需要者にのみ対象だった電力小売り規制が緩み、一般家庭も対象となったいわゆる「電力自由化」制度が始まりました。これを受けて、事業チャンスとばかりに4月時点での電気事業者登録数は大小合わせおよそ800社余りに上ります。これには、営利狙いの企業ばかりでなく、「電気代が安くなる」という現実的対応の消費者から「脱原発へシフトさせたい」という理念的対応の消費者まで含め、一般消費者も概ねこの制度を歓迎する傾向にあります。しかし、この制度を「ウソ」とメッタ切りにしたのが 認知科学者の苫米地英人氏です。彼は今年倒産した新電力大手の「日本ロジテック協同組合」の破産劇を引き合いに出し、「託送料」の仕組みを「鵜飼の鵜」と喝破しまししたが、彼の指摘はある意味するどいというか「確かにそう言えば、、、、そうだな」と納得させるものです。彼の指摘をちょっと簡略して羅列してみましょう。

・・・・・・・(以下苫米地氏の発言)・・・・・・・

<【新電力】は「託送料」の上乗せがある限り、【東電】や【関電】に価格競争で勝ち目がない。>
・・・・【新電力】っていうのはこの地域だと【東京電力】から「電気を買う」わけです。そして送る「送電料」も実は【東京電力】の送電線を使うんです。で、最後に要る「契約」だけ自分で取ってくるってことは、【東電】にとってはコレは“鵜飼いの鵜”ですよ。自分達の営業マンのコストが無くなって、彼らが勝手に自由競争で売ってくれるわけで。で、必ず送電料これ「託送料」って言うんですけれども送電料は彼らから取れるんですよ。電気は【東電】が「電気代」を決めるんで。コレは【東電】が儲かるだけですよね。

<新電力大手がなぜ撤退するのか?>
・・・・『ENEOSでんき』火力発電は「脱原発」には有望だが、【東電】との関係上、価格競争は元々期待できない。しかも【東電】の火力発電の原油をどこから買ってくるかっていうと【JXエネルギー】から買ってくるんで、最大顧客ですから、ソコと喧嘩するわけないじゃないですか。【東京ガス】【大阪ガス】のガス系など論外です。『LNG』は今「1バレル=30ドル」の『石油』に比べたら遙かに高くなる。逆に【東電】は既に「原発は償却が終わっている」「水力発電も(償却が)終わってる」んで、ということは『LNG』の【東京ガス】なんか勝ち目がないんですよ。

<大規模発電と小規模発電>
・・・・大規模発電には新規参入が事実上不可能なコストが掛かる。『原発』の場合はそのコストを料金に乗っけていい・独占地域でというやり方があったので【東電】【関電】などはやってきていた。小規模発電では最初から経済スケールから電力会社の大規模発電に価格競争力で勝てない。つまりは、事実上「自由化はされていない」ことになる。「電力自由化元年」という名目で、送電線使用料(託送料)で【東電】【関電】などの既存電力会社を潤すシステムが今回の大手【新電力】撤退の背景にある。

<「電力の自由化」を本当に進めるためのステップ>
・・・・全国を60Hzに統一し、【東電】と【関電】に自由競争させるべき。単に発電機というのは1分間に60回すか/50回すかのだけなので【東電】も明日から「60Hz」に出来る。日本の家電は全て「Hzフリー」と言って当たり前だが関東用/関西用があるわけでもなく、周波数に依存していない。唯一、東京や大阪の町工場のような所は「Hzフリー」ではないが、それらは補助金などで処理すれば圧倒的に安く済む。明日からでも統一すればいい!

<外国からの電力購入>
・・・・「60Hz」にしてしまえば、アメリカから電気が買える。ロシアからも中国からも買える。韓国からも買える。海底ケーブルで電力を引っ張ってくれば済む。それをやらせないためにわざわざ「50Hz」と「60Hz」に分けている。

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引用が長くなりましたが、「送電線」の問題は、当初から制度創設時に議論があり、経産省でも2020年を目標に「発送電分離」を目論んでおり、東電はその為の子会社作りとホールディング・カンパニー制度をこの4月より導入して、虎視眈々と自企業への有利な状況を作りだそうとしていますが、他の地域電力ではまだ足並みがそろっていないようです。それと、もう一つの苫米地の指摘の「50HZ VS 60HZ」のことは、灯台下暗し、でした。確かに周波数の問題はこれまであまり意識されていなかったように思いますが、電力の海外購入という手法の善し悪しの議論は別として、東電と関電がこの周波数の違いをいいことに「電力自由化」を逆利用しているとすればはなはだ問題と言わねばならないでしょう。苫米地氏の表現した「鵜飼の鵜」は事業者だけでなく、一般消費者たる我々自身の姿でもあることを認識しないといけません。

≪補論≫
「電力の自由化」とともに「電力の地産地消」ということも言われます。本稿の「送電」問題は、需要地を大きなエリアとして捉えることから起こる問題でもありますが、逆に言えば需要地を限定的に絞り込めば、送電設備のコストもかなり抑えることが可能に思えます。もちろん、緊急時の対応や地域ごとの需要構造の差については、それぞれの地域電力会社が相互に関与融通しあう技術的且つ制度的な仕組を作ることも可能でしょう。そういう意味でも経産省の「発送電分離制度」に対する姿勢と対応を時の政権とともに注視し続けなくてはならないでしょう。

※苫米地氏発言資料はMXテレビの番組「バラいろダンディ」(2月25日放送)での氏の発言を書き下ろしたものです

≪低炭素都市ニュース&レポート6月号より≫