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木炭と鉄

「鉄は国家なり」という有名な言葉があります。言ったのはドイツのビスマルク(鉄血宰相)でしたが、我が日本も明治維新以降、この言葉を金科玉条として鉄の生産に励みました。ということで鉄の話をするには、そもそも鉄を作り出す方法について知る必要があります。鉄の生産に木炭が使用されたのは、日本のたたら鉄のみならず、世界中どこでも使われていましたが、この技術は「酸化還元法」と言われるもので、原料となる砂鉄や鉄鉱石の中に含まれる酸素分を木炭燃焼によって除去(還元)することです。もちろん鉄分そのものを溶融するための熱源としての用途も木炭にはあります。鉄を作るには、高温状態にある中に、原料(鉄鉱石や砂鉄)と還元剤としての木炭を交互に何度も混ぜ合わす必要があり、この方法で大量に鉄を取り出すために考案されたのが、いわゆる「高炉」という設備です。この高炉で出来た鉄は「銑鉄(せんてつ)」と呼ばれるもので、まだ不純分を相当含んでおり、そのまま使用することは出来ません。この「銑鉄」をもう一度溶融(炭素分除去:酸化)させるのが「転炉」と呼ばれるもの
で、この過程で炭素分を調整することにより、硬さの違う鉄を抽出出来ます。この工程を「精錬(せいれん)」と呼んでいます。ちなみに木炭をつくる最後の作業も「精錬」(ねらし)と言いますが、これは炭化のムラを無くす作業のことですが、炭化時に含まれる不純ガスをやすのですが、これにより純度の高い良質な炭が出来ます。木炭は製鉄における燃材及び参加還元剤として、古代から近代まで非常に長い間利用されましたが、それは結果として森林伐採の弊害を招くことから、中国では既に4世紀に木炭の代わりにコークスが利用されており、西洋では17世紀頃からは石炭、そして18世紀にコークスが使われるようになりました。ところで、ここまでの話で言う鉄は、その形としては固形物であり、その活用方法は建築物から車両、家庭用製品など幅広く行きわたっていることは余りにも当たり前ですね。しかし、鉄粉という粉状のものの用途についてはあまり知られていないのではないでしょうか。ところが結構身近なところで、この鉄粉は使用されています。たとえば使い捨てカイロや脱酸素剤などですが、その他にも製薬メーカーの造血剤、或いは水田稲作における種子(モミ)を鉄でコーティングした「鉄コーティング水稲直播技術」にも使用されています。炭も粉末にすることによりその利用用途が大きく拡大しますが、鉄もおなじように粉状(紛体化)することで、これまで考えられなかった利用用途が考えられるのですね。アメリカのIBMでは、炭素繊維と鉄粉を使用した電磁波遮蔽材を特許取得していますが、この技術は建築や繊維産業などでも新しい技術として導入されています。現
在では、木炭を製鉄に利用することは技術の進歩によりほとんどありませんが、鉄と炭の関係は人類の歴史においてはこのように現在でも深いつながりがあります。

 

<DAIGOエコロジー村通信4月号>