放射性廃棄物保管適地選定

東日本震災から4年がたちました。

人間が嫌なことを忘れるためにどれくらいの時間が必要なのか、心理学的に答え があるのかどうかは知りませんが、4年と言う時間は果たしてどうなのでしょう か。直接の被災者とそうでない人には当然差があると思われますが、今年の3.11 前後のマスコミ報道を見る限りでは、中には被災者の現実を直視する報道がある とは言え、あの今でも記憶に残る衝撃体験は被災地各地での「追悼」という儀礼 に還元収束されつつあるように見えます。「嫌なことは早く忘れたい」という大 衆心理と「知られたくないことを隠したい」という権力中枢の思いが、皮肉にも シンクロしてしまっている訳ですが、そのことが逆に矛盾の露呈になっているよ うに見えます。

そのような報道の中でTBS報道ステーションが「廃炉・核の ゴミ問題」を集中的に時間を割いて報道していました。ドイツやフランスにおけ る原発廃棄物処理の困難さ、ご存じのフィンランドオンカロ」の報道されない 問題点などは秀逸でしたが、特に地下水との関連は地球と言う”生命体”の持つ本 質を突いているように思えました。報道では、我が国における原発推進と核廃棄 物について、その歴史を推進体制側の当時の科学技術庁事務次官の話を基に非常 にリアリティに編集されていました。そのなかで、国と電力会社幹部との会議の 録音が公開されていましたが、「廃棄物ゴミ」に対する”責任擦り付け”を笑い声 を出しながら行っている様子を聞いた時、結局は今でも変わらない構図であるこ とが浮かび上がって来ます。

震災後、「放射性廃棄物」に関して国は、あの手こ の手でプロパガンダを駆使し、青森・六カ所の矛盾を全国的に拡散しようとして います。「地質学的」見地から現在3カ所が検討されているようですが、皮肉に もこの3カ所はすべて今回の震災の被害地になっているようです。地質学者が言 うには、「地下深度(への廃棄物埋設)」は「地震の影響は少ない」という根拠 があるのかないのかわからない理屈を述べているようです。

もし「受益者負担」或いは「自己責任」という当世流行の思考で考えるならば、 原発エネルギーの益に十分に預かっているのは東京しかありません。GDPとエネ ルギー使用量は基本的には相関関係が非常に高いと言えます。ある統計では、東 京はニューヨークをも抜いて、世界一のGDP産出都市であり、国と都市を合わせ たGDP順位でも都市部トップの14位となっています。(ちなみに隣国韓国のGDPよ り東京が勝っています) そうであれば、原発のエネルギーの恩恵を受け、豊かな暮らしをしている東京、 地下深度技術が世界最先端を行く東京の地下こそ、「放射性廃棄物保管場」とし て適していると言えるでしょう。

何故、国はそう言わないのか。彼らは、適地選 定の基準に「地質学的」観点のほかに新たに「社会科学的」観点と言う逃げ道を 用意しました。簡単に言えば、「交通の要衝「人口密集地域」「歴史資源」など などをリスク評価していくことで都市部を避けようという意図であると思われま す。

繰り返しになりますが、資本主義或いは自由経済の原則である「自己責任」 「受益者負担」を社会科学的観点としてみれば、最も受益の多い東京こそ放射性 廃棄物処理適地にふさわしいと思われます。

これは、私も含め東京・首都圏で暮らす一人一人の問題でもあります。

もし、福島原発被災者と首都圏住民の”差異”を埋めるものがあるのであれば、こ れは、逆説ではありますが一つの「真理」と言えます。

4年と言う月日の中で、日本人は一体何を思考し学んだのか、問われる3.11でも あります。

 

 

 

<(一社)日本低炭素都市研究協会ML投稿より>