【競争の論理の貫徹】

NHKクローズアップ現代「地方から日本を変える①」を視聴。2つの事例とも、貫徹しているのは「競争の論理」と「すべてカネ」であった。地方創生法絡みの企画と思えるが、「このままでは地域が消滅する」と煽り、「人口増」だの「集客増」などを主目的とする、地方自治体に対する最後通牒のようなものだ。この恫喝に対して、地方は「努力」する。涙ぐましい努力だ。島根県海士町は移住者の若者に2年間据え置きで毎月15万を支給するという。2年後の返済が仮に債務不履行になっても「生活保護支給」より安い、という。移住民の若者も「起業」を煽られる。番組では成功事例をあげる。カキの養殖やブランド牛などの新規ビジネスが成功しているという。これを地域外に売り出し拡大するのだという。当然地域外にでれば競争は避けられないだろう。うまくいかなかったらどうなるのだろう。あの言葉がでて来る。「自己責任」!!もう一つの事例、岩手県紫波町では、補助金に頼らない集客施設がこれまた「成功」していると伝える。映像ではダンスをする若者、学習塾で学ぶ中学生が笑顔で登場する。懸命にコスト削減をして補助金だと145億円だった施設が、地元の金融機関から出資(借金)して45億円で建てることができたと、建設省OBの40代の経営者が話す。彼は言う。「補助金に頼らない、責任ある行為です。税金の無駄使いをやめないといけない」「(自分の)借金だと思えば真剣になる」。真剣でも失敗はある。その時はどうなるのだろう。やはり「自己責任」!!地域に暮らす人に取って、地方自治体とは果たしてどんな存在なのだろう。自治体存続のために人々は生きているのだろうか。首長も行政もそこに暮らす人々の現実の生活目線はない。ただただデータとしての「人口増」しかない。「人口を増やさないと生きていけないぞ」という恫喝は国家のみならず、大企業、或いは寄生的学者やシンクタンク、極論すれば東京に住むものも含め強者と思われるあらゆるところから地方に発せられる。減り続ける総人口なのに、地域が人口増獲得競争をすればつぶし合いになるのは目に見えている。一方、東京の弱者も「まだ地方にいるよりはマシ」などと自らを慰める。全てが競争を煽られる。若者は「自分探し」「個性ある生き方」などという甘言でやはり煽られる。紫波町の学習塾は通う中学生に「どんな職業に就きたいか、その為にやらなければならないこと」を人材育成という。生きる意味を問うことではなく、「人を材料とみる(人材)」ことである。

番組には、「里山資本主義」の藻谷浩介がこう言っていた。「移住者は自由なんです。どうしても地元になじめなければ出ていけばいいんです!」彼には、どいういう思いで若者が移住を決意し、またどういう思いで「出て行かなくてはならなかった」かの理由はいらないのだろう。「あんたが勝手に来て勝手にでていったのでしょ。」だから「自由」なんだと。もしそこに居続けたいならば「努力せよ!」「知恵を出せ!」藻谷と安倍が重なった瞬間である。

 

http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_3594.html