陰陽五行思想

さて、正月なのでおみくじでも買って運勢を占おうという人は結構いらっしゃるでしょう。昔から良く言われる言葉に「当たるも八卦当たらぬも八卦」という表現があります。普通は、「占いの一種か」くらいにしか思わないのでこのような表現になるのかもしれません。しかし、八卦の歴史は非常に古く、古代中国に発祥した「易」がその原点です。この「易」のそのまた原点が「陰陽五行思想(いんようごぎょうしそう)」という春秋戦国時代(BC700年~200年)に完成した独特の思想哲学体系です。中国と言う国の歴史は非常に古いので、このような思想体系も年代の重ねの中で重層的になってきているのですが、この「陰陽五行思想」は西洋科学におけるビッグバン理論にも勝るとも劣らない体系性を持った哲学(科学)思想です。詳細は省きますが、その基本はよく暦に見かける「きのえ、きのと、ひのえ、ひのと・・・」というアレです。この思想では世界を大きく「陰(地)」と「陽(天)」に分け、そこに世界の基本物質である「木、火、土、金、水、(もく、か、ど、ごん、すい)の五行」をそれぞれ配したものが、たとえば「木の陽(きのえ)」「木の陰(きのと)」「火の陽(ひのえ)」「火の陰(ひのと)」・・となる訳です。西洋の近代合理主義哲学(科学)ではこの物質としての面をどちらかと言えば強調していますが、陰陽五行では、物質面のみならず精神面も含めた総合的な体系性を持っています。即ち「(陰陽五行は)古代中国の宇宙観・世界観であるが、確乎とした法則の上に成り立っている科学でもあって、古来、中国の文化現象、即ち政治・宗教・信仰行事・医学・薬学・農業から民俗諸行事に到るまで、この法則の基礎の上にはじめて動き出している」(「古代中国陰陽五行の研究」:井上聡)というものです。私たちが、何気なく「今日は大安だから日が良い」とか「今年の恵方は○○だ」などと使いますが、東洋思想においては決して迷信でもなければ根拠のない話ではないのです。もっと言えばこの陰陽五行は人間の体にも当てはめることが出来ます。先ほどの「木、火、土、金、水」の五行にあたるものが「肝、心、脾、肺、腎」の五臓です。良く言う「五臓六腑」の五臓ですね。東洋医学の基本的な考えもこの陰陽五行思想に基づいているものです。昨年は、STAP細胞問題、或いはノーベル物理学賞など「科学」をめぐる話題が多くありましたが、人間を機械論的に見る西洋合理主義的思考から少し離れて、私たち日本人の源である東洋にもこのように大きな体系だった哲学・科学思想があるということに少し気付く年にしたいと思った2015年の元旦でした。