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なかなか面白い「ビックコミック」

漫画家の浦沢直樹が「読者がお金を払わなければ、「あるべき関係性」が結べない」と話していたが、彼の発言の意図とは違うかもしれないが、「お金を払う」行為は「対価」ではなく購入側(読み手)の「覚悟」だと私は思う。その「覚悟」を創刊号以来ずっと続けているのが「ビックコミック」と「ビックコミックオリジナル」の2冊だ。両誌とも1970年前後の発刊だからおよそ40年以上の付き合いになる。その「ビックコミック(オリジナル)」のここの所の新規連載作品が非常に斬新で面白い。特に時事ネタ系とも言える『隊務スリップ』(新田たつお)『今、そこにある戦争』(オリジナル・画:稲井雅人)と医学ものの『医者を見たら死神と思え』(はしもとみつお)は非常に挑戦的な内容だ。『隊務スリップ』は現政権と思しき輩が起こす戦争をギャグをいれながらも本筋は戦争の構造と本質を描いている。『今、そこにある戦争』も『隊務スリップ』同様、日本が起こす戦争をテーマとしているが、此方の方がよりリアルだ。アメリカが日本と中国を戦わすというストーリーはフィクションではなくノンフィクションとしても成立する。最新号では主人公の外交官の「戦争は外交の敗北だ!」というセリフは秀逸だ。外務省のポチ公連中に是非読ませたい作品である。一方の『医者を見たら死神と思え』は元慶応大学医学部講師の近藤誠が監修となっているが、ほぼ近藤の考えと信念が反映されている。近藤は著述「患者よ、癌と闘うな」でベストセラーにもなった現役の医者でもあるが、医学界と言う魔窟に対する歯に衣着せぬ発言は彼のキャラクターを差し引いても傾向に値するものだ。発行元の小学館もこの作品は物議を醸すという予測があったのだろうか、漫画の内容について「異論・反論大歓迎」という呼掛けを誌上で行っている。昨今、医学界の不祥事やその伏魔殿のような世界は一般市民や患者にはなかなかわからないが、本作品でそのような世界に穴をあける一つのきっかけになることを期待したい。そのほか、やはりビックコミックと言えば『ゴルゴ13』を忘れてはならないだろう。私にとっては『ゴルゴ13』は、今も昔も非常に分かりにくい国際情勢を古くは米ソ対立の冷戦構造から最近は金融危機や経済情勢などを解き明かしてくれる貴重な情報源でもある。その『ゴルゴ13』だが、近年、その脚本を読者から募集するというスタイルを取っているがこれが作品にリアリティを与えている要素の一つだろう。最新の3部作はFRBを裏から操るロスチャイルドと思しき集団とネット通貨との闘いを描いているが、件のビットコインをめぐる騒動はまだ記憶に新しい。作品では最後に「ネット上の仮想通貨は現在既に百種類以上もあるという。・・・・もしかすると私たちがお金に対する考え方を変えるべき時が来つつある事を示唆してるのかもしれない」と結んでいるが、実際にビットコインは現在でもその発行数を増しているようだ。

ちょっと漫画作品批評のような感じになったが、「たかが漫画、されど漫画」である。昨今の地に落ちたジャーナリズムよりある意味その上を行くというか、真実を描き出す姿勢は原作者、漫画家、編集者、出版社に対して敬意と激励の意を込めて、「覚悟」の購入をこれからも続けたいものだ。ちなみにフランスでは漫画は「第9のアート」と認定されているそうだが、絵としての作品性は当然ながら、ストーリー(脚本)やセリフなども加えた総合芸術としても漫画の価値が高まることを期待したい。