秘密保護法の裏にあるものと対処方

■秘密保護法をなぜ急ぐのか

秘密保護法は多分議会を通過することになるだろう。現状の状況から見て残念ながら政権側のスケジュールにキチンと乗っている。しかし、なぜ彼らはそんなに急ぐのか!多くのジャーナリストが政府関係者にそのことを問質しているが、全く要領を得ない回答しか返ってこない。森まさ子と福島みずほの国会でのやり取りを聞いていて、「あれ、」と思ったのは森まさ子も法案の裏にある制定動機を知らないのではないか、という疑問だ。これまで流布している法案制定の大きな動機の一つは、「秘密保護法がないと国際社会から相手にされない」というプロパガンダであるが、森まさ子に限らず自民党の若手議員などはほとんどオウム返しにようにこの理由を述べている。

■秘密保護法制定の経過

さて、本秘密保護法制定の動きを、歴史的かつ論理的な観点から見れば、中曽根政権時の「スパイ防止法」あたりに出自の根を見ることが出来るが、直近では平成22年12月に策定された「平成23年度以降に係る防衛計画の大綱」の「我が国の安全保障の基本方針 -我が国自身の努力-」あたりに今回の秘密保護法制定の意図が読み取れそうだ。http://www.clearing.mod.go.jp/hakusho_data/2012/2012/html/n2223000.html

これの元になっているのが、平成21年8月の「安全保障と防衛力に関する懇談会」報告書

だ。http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ampobouei2/200908houkoku.pdf (P52(2)情報機能と情報保全体制の強化)である。そして、それを受けてまとめられたのが、平成23年8月の「秘密保全のための法制の在り方について(報告書)」

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/jouhouhozen/housei_kaigi/pdf/10110808_houkoku.pdf

である。そこでは、記述項目がほとんど今回の秘密保護法の条文に反映されている。このように、防衛大綱制定から1年もたたずして今国会への上程である。「なにをそんなに急ぐのか?」という疑問が湧いて当然だろう。その一つのヒントは、2005年10月の「日米同盟:未来のための変革と再編」と思われる。すなわちそこには、「部隊戦術レベルから国家戦略レベルに至るまで情報共有及び情報協力をあらゆる範囲で向上させる。この相互活動を円滑化するため、双方は、関連当局の間でより幅広い情報共有が促進されるよう、共有された秘密情報を保護するために必要な追加的措置をとる。」と明記されている。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/henkaku_saihen.html

■米国と日本官僚

平成17年から平成25年の間に、日本では政権交代があったにも関わらず、先述のように時系列でみていけば、キッチリと米国(詳しく言えば米軍)からの要請に沿ったスケジュールが淡々と進められている訳である。t政権交代が行われようと米国(米軍)の指示に従い動いている外務官僚・防衛官僚の姿が浮き彫りにされているではないか!果たして、今回秘密保護法制定にむけて奔走している与野党議員の何人がこのような流れを把握しているのか、はなはだ疑問である。

■米国(米軍)の分断

さて、米国(米軍)にも急がないといけない理由があるように思われる。2005年後、米国ではリーマンショックオバマ大統領就任など歴史的転換の動きがあり、米国の世界軍事戦略の展開も大きく変わらざるを得ない状況になった。一口に米国(米軍)と言っても、そこは一枚岩ではない。興味深い報告がある。2010年にダイヤモンド誌に掲載された元CIA顧問のインタビュー記事では、「普天間基地が長い間存在している最大の理由は米軍の内輪の事情、つまり普天間海兵隊航空団と嘉手納の空軍航空団の縄張り争いだ。すべては米国の膨大な防衛予算を正当化し、軍需産業に利益をもたらすためなのだ。」と米軍内の事情を暴露している。http://diamond.jp/articles/-/8060

いわゆるジャパンハンドラーと言われる連中はこの軍需産業軍産複合体)の代理人なのだろう。内輪もめはしても軍隊の存在理由は「戦争」でしかない。米国政権の変化が、米軍の世界戦略にも変化をもたらすのは当然だ。大まかにいえば、共和党-軍産複合体の「戦争志向グループ」(ラムズフェルド戦略)と民主党-内政重視の「米軍世界戦略見直し派」があるようだ。確かに、オバマはシリア問題にしろ、イラン核問題にしろ、「戦争回避」の方策を取り続けている。ただ、残念ながら東アジアについてはオバマはあまり熟慮していないように見受けられる。東アジアに展開する米軍内の分断はあるにせよ、オバマが中東に注力している間に、東アジアにおける緊張を演出し続けることで、その存在理由を確保するということだ。

■秘密保護法の性質の悪さ

秘密保護法制定について、政治家も官僚もまったく米国(米軍)にコントロールされている実態があからさまになった。確かに、スノーデンの暴露が与えた影響は政権支配者にとっては「身の毛もよだつ」思いがあっただろう。そういう意味では、権力が自らの存在の保障を確保するために、歴史的にみてこのような法案が出されるのは常であり、当然だと言える。我が国の法案はこれまで述べたように、権力自らが熟慮したものではなく、宗主国からの指令に基づくものであるとはいえ、国会における政治家や官僚の答弁を聞いていると「悪乗り」と見える答弁が見え隠れする。「ブロガーも処罰対処」などと堂々と述べている。それだけたちが悪いということは出来るかもしれない。

■秘密保護法制定への対処

このような背景を考えれば、秘密保護法への対処法としては、まずは①法案における矛盾点(とにかくいい加減な法案なので矛盾だらけ!)をキチンと整理、論点化すること、この場合、ツワネ原則からの逸脱も問題視すべきだろう。

http://www.news-pj.net/pdf/2013/tsuwanegensoku.pdf

http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_8331133_po_0806.pdf?contentNo=1

次に②「国民の知る権利」の重要さをとにかく口酸っぱく言い続けること、そのためには、欧米先進国の類似法への対処の仕方なども参考になる。

そして、やはり国会議員を説得すること(ほとんど無駄かもしれないが)。これはそれほど簡単ではないが、「戦争」を準備し、やりたがっている連中がとにかくわんさかいることは明らかである。(注:今の日本の大手企業は何等かの形で軍需産業と化している)

いずれにしてもそれほど簡単には廃案に持ち込めないが、感情的な動きではなく、デタラメな論理にはキチンとした論理を打ち立てて闘うしかない。

あきらめたらそれで終わりだ!