劇団民藝『コラボレーション』

劇団民藝の戯曲『コラボレーション』を鑑賞した。

ドイツの作曲家R・シュトラウスとS・ツヴァイクとの友情をベースにナチズムへの批判を、政治と芸術という双方の立場から描いたものだ。

戯曲は活字を立体的に表現したものなのでやはり脚本・演出と俳優の力量が問われるが、どれも素晴らしいものであった。その要因の一つは、非常に”今の現実”が反映されているからであろう。やはり戯曲は古代ギリシアからシェークスピアに至るまでのようにリアリティの反映がないとつまらない。

S・ツヴァイクのセリフ

・・・「政治なんて反吐が出る!どうして政治家はあんなにも卑劣でいい加減なんだ?奴らの合言葉は欺瞞、奴らの敵は真実だ。あいつらの悪夢に引きずられてたまるものか。悪夢ならもう十分に味わった。力の限り抵抗してやりたい。ところが誰も自分を守るだけで汲々としてやがる

・・・「(ナチは)芸術をコントロールしようとしている

には今の日本の状況が浮かび上がってくる。

またR・シュトラウスが時の日本政府より依頼され皇紀2600年奉祝音楽を作曲したことを本劇のセリフで初めて知ったが、このセリフの挿入も演出した渾大防一枝の”今の現実”に対する演劇と言う芸術を通した”行動”であろう。

ただ一言勝手な欲を言えば、ナチズムを題材にすることはある種の予定調和的な効果を期待できる。過去の歴史からの教訓は何度繰り返しても必要という観点からみれば、今の日本が歴史修正主義に走りだしていることをナチのメタファで描くのではなく、文字通り安倍晋三が夢想する「美しい国」を舞台にした政治と芸術の相克を観てみたい。

しかし民藝を批判するつもりは毛頭ないが、それは既存大手劇団の限界であろう。それが突破できるのはアバンギャルでヴアンガードなアンダーグラウンドしかないだろう。

21世紀の寺山修二よ出てこい!

 

http://www.gekidanmingei.co.jp/2014collaboration.html