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日本の風土

和辻哲郎という哲学者の「風土」は非常に面白い本です。

本はおよそ100年前、大正末期から昭和初めに書かれたものですが、現在の世界のあり方を理解する一つの見方としても今でも「わが意を得たり!」という気がします。

彼は、世界を「モンスーン」「砂漠」「牧場」と3つに分類し、そこで生まれ

育った民族、人種、国家、それぞれの特徴を語っています。

「モンスーン」は文字どおり”季節風”であり、アジア一帯を指し示す風土の表現で、その特徴は「湿潤」で、その結果多様な生物分布や自然資源に恵まれていますが、台風や大雨などの自然の猛威も大きく、人間は自然に従う(忍従)しかありません。

一方「砂漠」は、現在のアラブ中近東を示し、その特徴は徹底した「乾燥」であり、そこでは自然に対する人間の「争闘」しか生存する術がない地域です。

また、「牧場」はヨーロッパ(北欧、中欧、南欧)を示し、その特徴は「湿潤と

乾燥の統合」であり、それはもっとも人間にとって「都合の良い」場所でもあ

る。従ってヨーロッパはほとんど人間に「征服」(合理)されている風土です。

この風土の違いは、上記に述べたように「自然とどう向き合うか」で決定的な違いが出てくる、と和辻は分析しています。

この本で和辻は、日本を

 「・・・日本の人間の特殊な存在の仕方は、豊かに流露する感情が、変化においてひそかに持久しつつその持久的変化の各瞬間に突発性を含むこと、及びこの活発なる感情が反抗においてあきらめに沈み、突発的な昂揚の裏に俄然たるあきらめの静かさを蔵すること、において規定せられる。それは、“しめやかな激情”“戦闘的な恬淡(てんたん)”である。これが日本の国民的性格にほかならない・・・」

としています。

「“しめやかな激情”“戦闘的な恬淡”」とはまた詩的というか講談的な表現でもありますが、東日本大震災原発事故、そしてめぐるしく変わる政治状況など、今の日本は果たして「しめやか」で「戦闘的」なのか、「激情」と「恬淡」はあるのか、はなはだ疑問ではあります。