食糧をめぐる本と映画2点

先月号で、農業問題としてのTPPのお話をしましたが、引き続き今月も農業と食糧をめぐる話題として本と映画の紹介を2点掲載します。

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<その1:『自殺する種子』安田節子著(平凡社新書)>

エコロジー村通信「三太郎の一言」でも触れていますが、「種子が自殺する」と

いう表現は非常に奇妙且つ衝撃的です。端的に言うと、播種した作物から取れる種子がある技術(農業生命工学)で2世代以降は使えなくなり、結果として農家(生産者)は毎年種子を購入する必要があるという仕組みです。この技術をもってすると、同じ農薬でないと種子が発芽しないということも可能になります。この種子はいわゆる遺伝子操作で作られており、この技術に対して特許が与えられています。米国のモンサント社が有名です。同じようなものにF1という品種もありますが、F1品種は第一世代に優性な性質を与え、2世代以降はその限りにあらず、というもので、「自殺する種子」とは根本的に違う、と著者の安田さんは述べています。

 

<その2:映画『ありあまるごちそう』2005年オーストラリア映画>

この映画のワンシーンに「今の世界の食料生産なら120億人分はあるのに、毎日10万人が飢えで死んでいる。これは紛れもない殺人だ!」というフレーズがあります。また、国連食糧計画(WFP)のデータによれば、「世界人口の20%にすぎない先進国で、総食糧生産量の60%を消費し、その3分の1が食品ロス(食べ残し・廃棄)として捨てられている。日本だけみても、年間700万トンの食品ロスを出しており、これは世界の食糧援助総量の70%にあたる。」と報告されています。

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2つの本と映画の話題ですが、この2つの出来事の底流には「経済原理(ビジネス)」があります。いわゆる資本主義経済はあらゆるものを市場化するという本質があるわけですから、人間の命さえその対象となります。

アダムスミスのいう”見えざる(神の)手”は、このような状況についても必ず解決してくれるのでしょうか!

否、それとも全く価値観の違う世界をわれわれは目指しているのでしょうか!?

 

※ちなみに、映画『ありあまるごちそう』は現在全国でロードショーが開始されています。興味ある方、一度ご覧になってはいかがでしょうか!