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売炭翁(ばいたんおう)

イスラエル空爆」「派遣労働者解雇」「世界恐慌」・・・・

新年早々から、国内外とも暗いニュースばかりが流れていますね。

テレビでは、学者・政治家・評論家あるいはタレント・・・などと言われる方々が、かまびすしく「格差・貧困」「金融システム」「恐慌」などを論じていますが、なぜか、虚しく感じられます。

その原因を自問自答していたのですが、持論を展開される方々に対する共通な思いは、「現場をホンとに知っているのだろうか?!」という疑問でした。

インターネットの普及により、「情報」「知識」などのいわば2次元世界は爆発的に拡大しましたが、「体(からだ)」「経験」という現場、いわば3次元世界を伴わない「空疎」な言葉の響きにしか聞こえないのは私だけでしょうか。

中国の白楽天白居易)の漢詩に「売炭翁(ばいたんおう)」という詩があります。

 

伐薪焼炭南山中

満面塵灰煙火色

両鬢蒼蒼十指黒

 

売炭得銭何所営

身上衣裳口中食

可憐身上衣正単

心憂炭賎願天寒

 

夜来城外一尺雪

暁駕炭車輾氷轍

牛困人飢日已高

市南門外泥中歇

 

翩翩両騎来是誰

黄衣使者白衫児

手把文書口称勅

廻車叱牛牽向北

 

一車炭重千余斤

宮使駆将惜不得

半疋紅紗一丈綾

繋向牛頭充炭直

 

 

【以下要約】

炭売り翁

楽天 (久保文夫訳)

 

都の南の山の中 木を伐り炭焼く翁が一人

顔中燻され煤だらけ

鬢は白いに手は黒い

 

炭売り銭得て暮らせるものか

着たきり雀の食い物尽きた

着るものとては単衣のみ

炭の値下がると生きられぬ 天よもっと寒くなれ

 

その夜都に一尺の雪

明け方炭を牛車に積んで 凍てつく道を牽いて行く

疲れた牛牽く飢えたる翁 おてんと様はもう高い

城門脇の雪融けの泥 そこで翁はひと休み

 

駆け来る騎馬の二人は誰ぞ

黄衣の宮使に白衫のお供

御上の御用と書き付けかざし

「車を北へ」と牛を追う

 

車にゃ炭がどっさりあった

どっこい役人銭出さぬ

紅絹一反綾一丈!「こんなもんをどうするだ」

「それが御上のお定めぞ 炭価運賃充分じゃ」

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<意訳>

炭売りのおじいさんは、寒空に、貧しい身なりにも係わらず、炭が安くなることを案じて、「もっと寒くなれ」と願います。

そこに役人がやってきて、「勅命」という言葉一つで、おじいさんの炭をわずかばかりの金額(絹と綾)でまきあげてしまいます。

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どこか、現代の状況と重なっているような気がします。

不況、恐慌・・・と言われる中、現代の売炭翁は私自身であり、またあなた自身かもしれませんね・・・。

 

※炭焼活動を行いながらも、”炭焼”と言うものが歴史のなかで、どのような位置づけにあったかをまだまだ勉強したいと思います。皆様のご意見等があれば、是非お聞かせください!(2009.1)